カミサマごっこ

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パルフェ(玲愛、由飛√)感想

パルフェ(玲愛、由飛√)感想

 

 どうも、ななみのです。
 はじめましての方ははじめまして、そうでない方はまた読んでくれてありがとうオリゴ糖ございます。
 先日に引き続き、パルフェの感想記事ということで今回は玲愛√、由飛√についてそれぞれ触れていきたいと思います。
 後にも言及するかもしれませんが、玲愛√と由飛√はぼくはセットなんだなあと思っています。そういう意味では、このタイミングで記事にするには非常にキリがいいとも言えますね。

 

●玲愛√


 まず簡潔に。

 

 泣きました。

 

 以上です。
 と、これで終わっては何のための感想記事なのかわかったものではないので、なぜ泣いたのかについて詳しく書いていきたいと思います。
 ぼくが涙したのは

 

『お前の周りの世界は、お前が思うよりも、ちょっとだけ優しいんだよ』

 

のシーンですね。

 

https://twitter.com/hope_0923/status/1259123989907030016

 

 まあ、深夜帯にこんなことになってたわけですけども、やはり彼女の境遇と照らし合わせるとすごい泣きなんですよね。
 ピアノの腕では由飛には全く敵わず、悪気があってかなくてか――そんなことは彼女にとってみれば些細な違いでしかありませんでしたが、周りも由飛へ期待を寄せる。玲愛にとっての『周りの世界』とは、自分の努力が正当にも無碍に扱われる世界であって、優しさなんて概念はないも同然でした。
 結果、共通で仁に吐き出したように『妬ましい』という感情が渦巻いていながら、実直に向き合うこともまた根っからの堅物であるところの彼女にとって地獄であるという『前にも後ろにも進めない』状況にあったと言えますね。
 ただ、ここの部分に関して一言添えるのであれば、玲愛にとって最も優しくなかったのは他ならぬ玲愛自身だったように感じます。しかし、その厳しさは反面、玲愛のキャラクター性でもあり、由飛との対比が綺麗に分かれる部分でもあり、ともすれば彼女の魅力の一部分だったろうなと思うわけです。
 当然のことながら、玲愛自身がそんなことに気が付くべくもなく、彼女の精神状況にはマイナスに作用していったであろうことは想像に難くありません。それでも、由飛に対する『妬ましい』という感情はあくまでもピアノの腕に起因するものであり、それ以外の部分、例えば由飛の人格などへと矛先を向けることなく、不断の努力で乗り越えようと必死だったことは彼女の芯の強さが光るところだったなあと痛感するわけです。
 さて、思った以上に話が脱線してしまいましたが、そんな彼女の境遇を前提に玲愛個別を見てみると、これはもう泣きです。
 上の台詞は仁のもので、ゆえに仁の目線から見えていること、感じていることは玲愛のそれらとイコールではないし、玲愛に突き付けてみたとて素直に認めるとも考えにくいです……が、仁の大枠な台詞を肯定できたところがとても感動的でした。
 仁にとって、『お前の周りの世界』とはどこの部分を指しているのでしょうか。
 無論、直前のくだりではキュリオ本店にヘッドハントに赴いて、そして本店のスタッフは快諾してくれたので、『お前の周りの世界』にキュリオサイドの人間が入るのは確かでしょう。しかしながら、ヘッドハントという思案そのものが玲愛陥落を前提にしか成立しえないわけで、そして玲愛を口説き落とすまでの一連を作ってくれたのは由飛、里伽子、瑞奈に板橋さん、モールのキュリオスタッフと、大芝居を演じるためにとても多くの人間を巻き込んでいます。彼ら彼女らも含めて『お前の周りの世界』であり、だからこそ玲愛も肯定するに至ったのかなと思います。壁打ちですからね。
 玲愛√のシメであるところの、脚本・夏海里伽子による大芝居、これを契機に『お前の周りの世界』が目に見えて広がっていったことこそ真に優しい点なのではないかなと感じました。最初はベランダを挟んだ数畳もないくらいのこじんまりとしたふたりの世界、玲愛にとってはアイデンティティの存亡に関わる苦しい世界が、優しく照らされながら拡大していく様子は、ラブコメやギャルゲ、エロゲの輪を超えた場所に位置する感動を引っ張ってきてくれました。
 里伽子の芝居にもうひとつ加えるのであれば里伽子から由飛へ向けた台詞『嫌な役回りをさせてしまった』といった趣旨の言葉。あれは『玲愛を意図的に苦しめるという辛い立ち位置』のみならず、『結ばれないとわかっていながら、それでも仁と恋愛じみた立ち回りを強いられる役目』のことも入っているのだなあと思いました。事実、由飛はそれを感じ取ってか、後者に言及する形で、自身の後悔と寂寥を吐露しています。それでも、仁のリアクションは、計画を全て破棄するという自分の身勝手を許容してくれた里伽子に対して『やっぱいい女だよお前……』といったそれで、由飛が不憫に思えて仕方ないです。ここに関しては由飛√への期待を煽る部分だとも感じたので、玲愛→由飛の順での攻略が正着なのかなあとか、ぼくは感じちゃいましたね。
 台詞回しに関しても、『私のこと、嫌いになったら言ってね? そうしたら、仁を、自由に、して、あげる……から……っ』といったシリアスなやつから、『文武両道のストーカー』『満点はこれ以上上がらない』のくだりなど、会話のテンポもすごい好きで、パッケージを飾るに恥じないヒロインだったなと感嘆しました。

 ●由飛√


 『いやもうなんやねん』と、まずは最初に叫ばせて欲しい。時系列的に意図されたものではないとわかってはいますが(いや本当か?)、あまりにプレイバックするシーンが多くて胸がズキズキしていました。

https://twitter.com/hope_0923/status/1259007290318835713

 このブログの読者諸君様には伝わると思うんですけど、小木曽さん家の雪菜さんをひしひしと感じていましたね。そりゃもう、ひしひしと。
 んで、由飛個別の後半でどんどん由飛が壊れていくわけじゃないですか。もうね、しんどさの極みでしたね。なんでこんなところで辛い思いしてんだろとかひとりツッコミながら。
 由飛のどこが一番好きかって話なら、ぼくが挙げるのって告白シーンなんですよね。いやそれ個別の初っ端やんけって言われるのもわかるんですけど、ここの由飛がぼくはとても好きなんですよ、主に人として。
 突然の告白とはいえ、一度はお断り(由飛的にはそうではないらしいけど、傍からみたらどう考えても振ってます)をしたのちに再考してOK。まあ、何も知らなければ無茶な流れだなと思うところですが、風見由飛というキャラクター性のフィルターを通して見た瞬間に別の景色へと変貌します。


 『30分……30分だけ考えさせて』


 この台詞なんですよね。いやもう、本当にこの台詞が全て。
 風見由飛という人間は良くも悪くも考えません。感じるままに常に行動し、フロアでは客を和ませる一方、かすりさんや明日香ちゃんには渋い顔を多々されています。それが風見由飛であり、キャラクター性、魅力、アイデンティティとどこからも切り離せない部分です。
 しかし、ここで彼女が口にしたのは今から自分は考えるのだという意思表明。これってつまるところ仁への歩み寄りに他ならないわけですよ。感じるままに自分の世界で生きてきた由飛が、仁の人間性に近づいていくシーンは彼女が心を開いた証でもあり、非常に重みがありました。これを個別の初っ端にぶつけてくるの凄すぎてビビり散らかしてました。
 それから、由飛の√はやや中だるみしていて、盲目的に近づいていく由飛を淡々と描いて終わりなのかなと思いきや、そこは丸戸先生。そのまま終わらせてくれるなんてことはなく、ぼくのトラウマを……ってこの話はさっきしましたね。特に、由飛が弾けなかったのは玲愛が弾けなかった部分というオチで一気に目が覚めました。玲愛√では回収できなかった玲愛のピアノ的な側面を由飛√でぶっこんできて、おおっとなりましたよ。
 最後にですが、由飛の試験対策をファミーユメンバーで協力していくところもかなり好みでした。由飛が他人に近づいていくのが個別であり、それに呼応する形で他人もまた由飛に近づいていく構図はまさしく優しい世界に思えて、温かかったです。
 由飛の告白の返事『考えたこともなかった』というのが、『あなたを恋愛的に見たことがなかった』という意図が少なからず含まれていることは否定できません。しかし、別の見方として言葉通りに受け取ってしまう、つまりそもそも『大事なことを考えて決める経験が欠如していた』のではないでしょうか。

 ●ふたつの√について


 直前で書いたように、いずれの√も仁との恋愛劇を幕切れに用意したかすり・明日香√とは少し趣向が異なっており、彼女らそれぞれのアイデンティティを肯定するために用意された世界だったのだなあと胸が温かくなりました。
 メタ的な話になりますが、玲愛√の分岐と由飛√の分岐はひとつしかありません。両方とフラグを立てた後に、イブにてどちらを選択するか。早い話が、同時攻略が非常に容易であるということです。


『私が先に迫ったから仁は私になびいただけで、由飛とは、ほんのタッチの差だったのよね~?』


 これ、玲愛√の最終盤の台詞ですがお見事。その通りです。個別√にすら他ヒロインと全く同じイベントが発生するなんて、かなり特異なシナリオなのではないでしょうか。
 やっている途中は攻略サイトに促されるままに、「どうして玲愛のフラグも由飛のフラグも、どっちも立てないといけないんだろう」と不思議に思っていましたが、個別を完走すればわかります。玲愛の問題を解決するにも由飛の問題を解決するにも相手方の協力が不可欠となっており、かつそれぞれが仁のために動く理由――早い話が下心が必要だったからではないかなと。だからそれぞれのエンディングもまた相手に勝てる手段を選びます。喫茶店経営なら玲愛は由飛に勝てるし、ピアノでなら由飛は玲愛に勝てる。彼女らが無意識にも仁越しに見据えていたのは姉妹対決だったように感じました。
それから、結末の方向と同じくらい玲愛と由飛はきっぱりと性格が分かれており


『(仁の部屋を見て)由飛の部屋に似てる』
『仁……まるで玲愛ちゃんみたいだよ~』

 
 と、このような具合です。
 これめちゃめちゃ面白いのが、告白のときの反応で、玲愛に告白されたときの仁のリアクションと、仁に告白されたときの由飛の反応って非常に似ているんですよね。
 上の台詞とも合わせると、お互いにとってお互いの方向を向いたときにその直線上で手を伸ばしている存在が仁であって、だから玲愛にとっては由飛が、由飛にとっては玲愛がいたからこそ仁と結ばれたと言っても過言じゃないと思います。
 互いのアイデンティティに強く寄与したふたつのシナリオでしたが、それぞれの人生を彩っていたのは、その根底にいたのは誰だったのか、を明に示す素晴らしいエンディングであったなと感激しました。

 

 ●最後に

 

 前回(https://fancywave.hatenadiary.jp/entry/2020/05/09/025057)から合計で4人のシナリオに触れたわけですが、率直に申し上げます。

 

「どの展開においても、やっぱり仁は里伽子が好きですよね?」

 

 なんだろ、他作品で挙げるならWA2のかずさのような存在みたいな。
 これが浮気になっていないのって、偏に里伽子が拒絶チックな態度を見せているからだと思うんですよ。でも、それが逆効果になってもいる。
 里伽子が決して受け入れることがないからこそ、仁は安心して里伽子に思いを寄せることができるわけです。受け入れてもらうことを拒絶する姿勢は、実に歪に見えます。互いに拒絶し合うことを愛くるしく感じる状況もまた然りです。
 ぼくは、かすり、明日香、玲愛、由飛の順にプレイしてきたのですが、『仁が勇気を振り絞って告白する』みたいなシチュエーションは由飛が初だったように思えます。それ以外の三人では、既にヒロイン方が好意をあらかた示しており、するにしても告白時にはほぼ確信をもった状態で、いわばもはや告白されているも同然でした。そういう意味でも由飛の告白シーンは非常に新鮮であったなとも感じました。
 風見姉妹の√をプレイして少し思いましたが、仁はやはり里伽子に寄っています。元鞘以上に里伽子を意識する理由は、仁の言動の節々から里伽子らしさを感じ取っているからなんじゃないかなとか、まあここらへんはあくまでも妄想。実際、相談に乗ってもらっているしね。
 ただ、プレイ以前から他ヒロインの√でもここまで幅を利かせて、プレイヤーの意識に介入してくるヒロインもなかなかいたもんじゃないなと感想を抱いた次第でございます。

次回は恵麻√か、あるいは里伽子√もセットかはわかりませんが、『パルフェ』の中核へと近づきながらここらへんでお別れしたいと思います。
 それでは、またどこかで。